つまりは知名度なんだけど、じゃあ知名度って何なのさっていう(参院選2013:比例区「候補者名」での得票数から)

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10人中10人がこう言うと思いますが、参院選は予想されていた通りの結果になりました。自民党の圧勝も、民主党の惨敗も、絵に描いたよう。共産党の躍進や山本太郎の当選がややサプライズとはいえ、前哨戦であった都議選の結果からある程度予想されていたことです。とはいえ、共産党以外の野党が、ここまで見事に泡沫政党と化していくのを見るのはなかなか忍びない気持ちです。3年後までに建て直せるんでしょうか。

これからしばらくは「対立」の時代になるんでしょうね。圧倒的数の強さを誇る与党と、それにすり寄る勢力。そして、それに噛み付く抵抗勢力。なにせ首相自身が、自説に反対する人々に対して狭量な態度を見せていますので、「対立」構図はそう簡単には埋まらないでしょう。むしろ硬直化していく。与党が強権的であればあるほど、レジスタンスの気運は必ず出てくる。自民党への積極的支持層がそれほど多いとは思いません。共産党の躍進や山本太郎の当選は、日本全体を覆う「対立」構図が硬直化してきたことの現れであるように思います。だから「調整型」の議員は当選できない。今後しばらくは「たしかな野党」共産党に、権力の暴走を阻止してもらうことを期待するしかないでしょう。

いろいろと思う点はありますが、選挙の総括はすでに多くの人がされていますし、これからも分析がされるべきことですので、あまり話題にならなそうなところをつついてみます。ちょっとおもしろいなと思うことがあったので。


昨年末の衆院選では、小選挙区制という仕組みへの批判が割と多く見られました。ぼくも、これじゃ選びようがないじゃないかとだいぶ悩んだし、死票が多く出る小選挙区制への疑問も抱きました。どうせ決まっているから、と投票率の低下にもつながる。

参院選は、小選挙区と中選挙区が混在したような制度になっています。定数が複数人である都市部は候補者も多く中選挙区のような扱い。1人区が多い地方在住者にとっては今回も小選挙区のジレンマを感じることになったと思います。幸運にも、ぼくの選挙区は応援したい候補が当落線上に位置する激戦区でしたので、選挙区での迷いはありませんでした。結果は残念でしたが、投票行為自体には納得しています。

ややこしいのが比例区。衆院選とは異なり、「党名」でも「候補者名」でも記入できます。だいたいそれを知らずに投票所に行ってから掲示されている紙を見て選ぶという人が意外に多いのでは。参院選の比例区「非拘束名簿式」のしくみについては下記の説明をご覧下さい。
21日に投開票、投票の仕組みは? - 産経新聞

で、今回の結果を見てみると、

≪選挙情報≫ NHK 2013 参院選(参議院議員選挙 開票結果) - NHK

なるほど、党毎に100万票で1議席なんですね。生活の党は議席獲得まであと一歩。惜しかった。
で、さっきのNHKのページで各党派をクリックすると、「候補者名」での得票数が見れます。これがおもしろい。17万票を獲得した三宅洋平氏が落選で、10万票の渡邉美樹氏が当選という、比例区マジック。なるほど、いくら「候補者名」で投票できるといっても、比例区っていうのはあくまでも「党」なんですね。党の知名度によって決まる。

で、よく見てみたら「候補者名」での得票数は、なんと上位6名までが公明党の議員なんですね。自民党1位で42万票なのに公明党1位は99万票。自民党の上位議員もおそらく利害の絡む組織的得票の方々なのでしょう(よく知らんが)が、それをはるかに上回る。この数字を知ったらおもしろくなってきたので、NHKのページをもとに集計してみました。検算してないので間違ってたらごめんなさい。

党派
得票数
議席
「候補者名」での得票数
得票数における
「候補者名」の割合
候補者数
自民党
18,460,404
18
4,380,274
24%
29名
公明党
7,568,080
7
4,234,935
56%
17名
民主党
7,134,215
7
2,035,499
29%
20名
日本維新の会
6,355,299
6
1,163,733
18%
30名
共産党
5,154,055
5
506,286
9.8%
17名
みんなの党
4,755,160
4
533,735
11%
15名
社民党
1,255,235
1
317,008
25%
4名
生活の党
943,836
0
219,847
23%
6名
新党大地
523,146
0
124,297
24%
9名
緑の党
457,862
0
215,400
47%
9名
みどりの風
430,673
0
111,042
26%
3名
幸福実現党
191,643
0
38,347
20%
3名


総得票数における、「候補者名」での得票数が占める割合(以下「割合」)を見てみると、だいたいが20%前後で推移していますが、公明党がダントツの56%。組織的に動員されて、きちんと統率されていることが分かります。この組織力はすごいわ。幸福実現党と比べても、質・量ともに組織的強さにおいて圧倒的。

同じく組織的動員のイメージがある共産党の割合は、もっとも低い9.8%。これは、ふだん支持政党の無い無党派層が共産党に流れたという解釈でいいのかな。所属議員の顔は知らないけど、自民党へのアンチテーゼとして共産党に入れるという。これも一種の「風」かと。例えば維新の会のアントニオ猪木のように有名人候補がいないというせいもあるかと思います。

維新の会やみんなの党の割合が低めなのも、無党派層の期待が表れたものでしょう。議員のことはよく知らないけど「なにかやってくれそう」というイメージ。「風」ですね。なにしろ、猪木氏は「政策について、維新の会と打ち合わせをしたことがない。選挙に風を吹かせてくれといわれて・・・。元気を入れる役回り」と自分で言っているぐらいですから(参考参考)。

そして公明党と並んで割合が突出しているのが、緑の党。「候補者名」での得票数のうち、8割以上が三宅洋平さんに対する票です。17万票って多いのか少ないのかよく分からないなあと思っていましたが、こうやって見るとすごいですね。党の知名度も、組織力も無い中でこの得票はすごい。
これはもしもシリーズの思考実験ですが、三宅洋平さんは、たとえば生活の党から出ていれば議席を獲得できたかもしれません。あるいは社民党から上の、今回議席を得た政党のいずれかに所属していれば当選でした。

ぼくもそうなんですが、三宅洋平さんに投票した人は、おそらく「緑の党」に入れたというよりも「三宅さん個人」に投票したという感覚のほうが強かったのではないでしょうか。もし大選挙区制なら彼は当選していたかもしれない。だから、ワタミより多いのに〜と思ってしまう。だけど、それはルールだからしょうがない。

比例区はあくまでも「党」の争いなんですね。「候補者名」を記入することで、その感覚を忘れてしまう。総得票数に対する「候補者名」での得票数の少なさをみても(三宅雪子さんで3万票台ってちょっと驚きでした)、鍵を握るのはあくまでも党としての知名度。生活の党や緑の党はその存在すら知らない人もけっこういるのでは。
三宅洋平さんは、「全候補中26番目の得票で一人の政治的立場としての存在感は生む事ができた」としつつも、「ルールはルール。それを理解して臨んだので言い訳にするつもりはない。比例で勝つには、強い党を作らなければならない」と言っています。

やっぱり、比例区でわざわざ「候補者名」を書くのは、その候補を応援したいという場合か、あるいは自分が所属している組織の利害に関わる場合か、いずれにしても政治に対してある程度コミットしようとしている人に限られます。投票所に来るまで比例の投票方式も知らなかったような人は、議員名まで書きはしないでしょう(以前のぼくはそうでした)。なんとなくのイメージやそのときの「風」で政党名を選ぶわけです。けっきょくは「候補者名」がどうのこうのというような細々としたことよりも、自民党なら誰でもいいという意味での得票が1,400万票あることが圧倒的なわけで。

少数政党が議席を獲得するには、少数政党同士でまとまって選挙協力するか、選挙制度を変えるか、あるいは議員定数を増やすか、しかない。昨今のトレンドでもある「議員定数の削減」が、ほんとうに政治家自身の「身を切る」ものなのか、よく考えた方がいいと思います。ぼくは、増やしたほうが民意を反映できると思う。

と、まあいろいろと妄想を膨らませながらNHKのページを眺めていたのですが、実は個人的にいちばん衝撃だったのは意外なところにありました。


新党大地の鈴木宗男氏。



写真を見てもらうと分かりますが、ムネオハウスで有名な、あの鈴木宗男代表ではありません。今回の参院選に出馬したのは、鈴木宗男代表と同姓同名の鈴木宗男氏です。
新党大地「鈴木宗男」氏を擁立 出馬できない代表と同姓同名 - 産経新聞

「知名度を生かした支持票を集める狙い」として出馬した、この鈴木宗男氏がなんと党内トップの6万票。これって、三宅洋平(17万)は別格として、三宅雪子(3万票)、谷岡郁子(5万票)、山田正彦(4万票)、東祥三(3万票)など、実績もあり、個人的には応援したいと思っていた議員の得票数よりも多い。

失礼ながら、鈴木宗男氏に期待して票を入れた人はそんないないでしょう。投票所に掲載されている比例区名簿を見て、あら鈴木宗男だわ、なんつってカキコしたぐらいのもんじゃないでしょうか。それが「知名度を生かした支持票」の正体なのでは。鈴木宗男代表の知名度ではあるけれども、投票された鈴木宗男氏は鈴木宗男代表ではない。いわば、非実在知名度。それが、これだけ得票しちゃう。

これって、「知名度」っていったい何だよという、新党大地からの痛烈な皮肉なのか。選挙を使った壮大な風刺なのか。


三宅洋平さんが17万票を得たのは、三宅さんの「知名度」です。だけど比例区で勝つには、党としての「知名度」が必要でした。だから議員としては、大きな政党に所属したほうが有利だし、逆に政党としては、「知名度」のあるタレント候補を擁立しようとする。その結果、党の力で当選した議員は党議拘束に縛られることになるし、有名人候補は単なる客寄せパンダになる。

選挙戦の戦略って、つまりは「知名度」ってことに集約されるんだろうけど、じゃあ「知名度」っていったい何なのさっていう。それ、「政治」に関係あるのかな。っていうか実在してるのかな。


つまりは知名度なんだけど、じゃあ知名度って何なのさっていう(参院選2013:比例区「候補者名」での得票数から)

つまりは知名度なんだけど、じゃあ知名度って何なのさっていう(参院選2013:比例区「候補者名」での得票数から) 2013.07.23 Tuesday [政治・メディア] comments(2)
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山中 (2013.07.24)

こんにちは。比例は緑の党の候補者だった人に入れればお得~二票てこと?ラッキーと勘違いして入れてましたけど(アホ)、結果は党の得票数100万ごとの1議席は程遠く。順位も何も個人的になんのこっちゃ意味がわかんなかった選挙でした。

で、鈴木宗男さん…新党大地は目の付け所がおかしいですね笑。また、鈴木さんの顔が印象に残らないという絶妙さ。
あんなに危惧してた選挙は、最後までなんじゃらほいでした。

山やま (2013.07.25)

やっぱり、こうやって選挙制度のこととかも学んでいくしかないですよね。そういう意味でも「投票する」という行為自体に意味があると思います。










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