映画「立候補」予告編 有名人候補と泡沫候補

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気になる映画を見つけた。



映画「立候補」公式サイト

「泡沫候補たちはなぜ300万円も支払って選挙に立候補するのか? 橋下維新で盛り上がりを見せた2011年の大阪府知事選挙を軸に、その原動力を探ったドキュメンタリー映画」だそうです。夏の参院選を目前に控え、想田和弘監督の「選挙2」と合わせて観たい作品ですね。


泡沫候補といえば、東京都知事選ではマック赤坂や又吉イエスといった個性的な人たちが立候補するのが恒例となっており、ぼくもYoutubeで政見放送なんかを面白半分で眺めながら、なんだこれと笑ったり、政見放送っていちばんアバンギャルドな放送帯なんだなと感心したりしていました。



マック赤坂さんは有名ですね。
コスチュームをはじめ、何とコメントしたらいいのか、どこまで本気なのかぼくには分かりません。その辺りもこの映画を観れば分かるのでしょうか。知りたいような知りたくないような…。



こちらの政見放送は初めて見ました。
「どうせ選挙じゃ何も変わらないんだよ」と言い放ち、中指を突き上げる外山恒一候補。2007年当時、この動画はネット上ではたいへん人気を呼んだそうです。他の泡沫候補同様にキャラ立ちが全てであり、シュールな映像に仕上がっていますが、そのメッセージはいま見るとなかなか卓見ですね。オチも上手いし。
ちなみに本人は、政見放送はウケ狙いだったと語っているようです。興味を持ったのでさらにググってみると、こちらの動画ではグローバリズムを批判するなど、まともなことを言ってます。さらに、実際に選挙演説(飲み会?)に行かれた方の記事(泡沫候補研究)を読むと、外山恒一という人物像がなんとなく見えてくるような気がします。「アブナい人」というイメージ作りをされていますが、なかなか深いんですね。


彼ら泡沫候補には、例外なく「イロモノ」というレッテルが貼られます。ぼくらはそういう目で彼らを見る。ぼくもそう見る。どうしたってそう見てしまう。そういう心のクセがあるからです。べつに「イロモノ」でなくとも、見知らぬ顔に対しては、出る杭を打とうとする心理がどこかではたらく。

昨年の衆院選で、脱原発を訴えて出馬した目黒区のデザイナー丸子安子さんは「普通の人」でした。
「普通の人」出馬できる 目黒のデザイナー 脱原発訴え - 東京新聞

「私たちの一票で社会は変わる」という当たり前のことが実現するためには、さまざまな壁があります。「候補者乱立を防ぐ」という名目で設けられている世界一高い供託金(小選挙区で300万円、比例区で600万円)。さらには候補者への「売名行為」という陰口。「政治には関われない」という空気。こういった村八分的な「風習」が、政治というものをぼくらの生活から切り離しています。

上記記事より
二人の娘の母親でもある丸子さんは福島原発事故後、放射能汚染から子どもを守る活動などをしてきたが、出馬を知って離れた仲間がいた。「売名行為」と陰口もたたかれた。「私は何も変わっていないのに『政治には関われない』と言われる」
「有権者は望めば立候補できるはずなのに、まるで議員は別の立場のように思われ、両者が分断されている。子どもたちへの投票教育を怠り、あれもこれもだめという選挙制度が、日本の民主主義をだめにしてきた」
「署名やデモの次の自然な活動の姿として、今がある。誰だって選挙に出られることを知ってほしい」と力を込める。


政治のことを、自分の家族や生活をもとにして考えるのではなく、テレビの画面上に争点があるかのように錯覚して誘導される、すなわち選挙という行為を評論家感覚やゲーム感覚で捉えている人は案外多いのではないでしょうか。

選挙は知名度がいのちです。テレビに出ているタレント候補が組織力と組めば簡単に当選します。選挙時期が近づいてくると、各党がいかに有名人を擁立するかが選挙の焦点になったりする。候補者が何を言ってるのかよりも、ナントカガールズ等とあだ名を付けることのほうに一生懸命になる。そういうレッテルだけで分かったつもりになって多くの票が投じられる。現在の日本の選挙とは人気投票です。小選挙区制という制度の導入によって、その側面が大きくなってきたとも言えます(だから政権交代しやすい仕組みではあるわけです)。

橋下徹氏にしろ、石原慎太郎氏にしろ、猪瀬直樹氏にしろ、なぜこうも恥ずかしいことを恥ずかしげもなく言ってしまうのか。そして、日本人はなぜそういう人たちを選んでしまうのか。彼らはみな有名人候補です。有名人候補だから悪いとは限らないけれども、選挙結果が知名度によって支配されるという現状は、議会制民主主義を標榜する国の仕組みとしては良くない傾向であると思います。

橋下徹氏は「誤報された」とか、「日本人は読解力不足」などと言って自己正当化を図っていますが、その詭弁術は目に見えて劣化しており、論旨がおかしいのは明らかです。けれども、いまもって「マスコミの伝え方が悪い」とかいう擁護の意見を少なからず目にすると、ああなるほど日本人は読解力が不足してるという点だけは当たってるなと。

橋下徹氏は69年生まれのテレビ世代。もちろんぼくなんかもテレビ世代なわけで、彼を選んでしまう日本人も含めて、ある意味、時代の申し子なのではと。橋下現象とは、橋下氏個人の問題だけではないはずです。

テレビ世代からネット世代への世代交代は必ず起こります。いまはまだテレビ世代が大手を振る時代。橋下徹氏はその最後の砦なのかもしれません。欺瞞がボロを出して崩壊している。それは橋下氏の欺瞞であると同時に、ぼくら日本人自身が作ってきた社会というものが抱える欺瞞を見せつけられているような気もするのです。有名と泡沫を隔てるもの、その筆頭はテレビです。そのうち「読解力のある」ネット世代が出てくれば、政治なんて必然的に変わるんじゃないでしょうか。もちろんネット世代のすべてが「読解力がある」わけではないし、むしろ二極化あるいは蛸壺化が進むのかもしれないけど、すべてを同じ色で塗りつぶしてしまうテレビよりはマシだろうなと思います。有名人候補がテレビを栄養にし、泡沫候補がネットを栄養にするというのも象徴的だなと。


泡沫候補をバカにする心のクセ、出る杭を打とうとする心理は、無くならないかもしれない。けれども、そういう自分の傾向を、認識して向き合うことはできます。その上で、人気投票やお祭り騒ぎだけでない、もっと冷静に選挙というものに向き合い、投票できるようにならないといけないですよね。

映画「立候補」は、そのことを認識する上で今まで気付かなかった視座を与えてくれるような気がします。彼らはなぜ300万円も支払って選挙に立候補するのか。知りたいです。


ところで、この映画がとくに気になったのは予告編がとても良かったからです。本作監督の藤岡利充さんは76年生まれ。ぼくと同い年です。予告編で流れるBGMやその編集センスに、同世代の感覚を感じました。



Youtubeで見ると「イロモノ」でしかない泡沫候補ですが、この予告編では一大叙情詩になっている。選挙によって向き合うのはPCやテレビの画面だけではありません。自身の生活、家族、はたらき方や子育て、生き方と向き合うということです。候補者にとってもそうだし、有権者にとってもそうです。

同世代の監督が、泡沫候補という対象をどのように切り取ったのか、そこから見えてくるものは何なのか、とても興味があります。


公式サイトfacebookに掲載されている感想も参考までに転載。
「しつこい。しつこいほどに深く対象者を捉えている。良し。」ジャーナリスト 田原総一郎

「政治家とは何か。私たちが政治家を選ぶとはどういうことか。深く深く考えさせられた。われわれの社会に刃を突きつける、驚くべき傑作。」ジャーナリスト・作家 佐々木俊尚

「群衆の罵声を浴びながら踊り続けるマック赤坂の姿に泣きたくなった。見事だ。ありがとう。」映画監督 森達也

「とにかく面白い。あれやこれやと引き込まれ、最後は涙流す自分にびっくり」俳優 近藤芳正

「バカにするがいい。その分、感動に撃たれるから。」映画監督 松江哲明

「登場する立候補者たちの広々とした心に感銘した。これぞ泡沫の底力だ。」元東京都知事候補・現代美術家 秋山祐徳太子

「立候補する事に意味があるかどうかは、あくまで候補者が決める事だと気付かせてくれる作品。信じる力は偉大だ。」MC・Producer shing02

「泡沫と笑うは易し。でも彼らはまぎれもない”意義申し立て者”だった。懸命さが愛おしくなった。」アジアプレス・インターナショナル大阪オフィス代表 石丸次郎

「爆笑と驚嘆の果てに、民主主義の光と影だ現出する恐るべき人間ドラマだ!日本人必見。」東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター 矢田部吉彦

「マイノリティとマジョリティについて深く考えさせられた作品。観終わった後、一人で唸った。」
WKA世界ムエタイウェルター級・WPKC世界ムエタイスーパーウェルター級王者 佐藤嘉洋

「ラストは鳥肌が立つと同時に、ウルッときて、背筋がゾッとした。」元川崎市議会議員 山内和彦(『選挙2』の主人公「山さん」)



追記:本編を観ました。感想など→ 映画「立候補」本編 彼らが立候補する理由、ぼくらが投票する理由

映画「立候補」予告編 有名人候補と泡沫候補

映画「立候補」予告編 有名人候補と泡沫候補 2013.05.22 Wednesday [音楽・映像] comments(0)
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