TPPの対立軸

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ニューヨーク在住の映画作家である想田和弘さんが、アメリカの医療保険制度の酷さをツイートしていました。堤未果さんの『ルポ貧困大国アメリカ』でも、格差が拡大化するアメリカの現状は伝えられていましたが、他国の国民がどのような環境に置かれどのような生活を送っているか(政府と庶民の関係)を知っておくことは、現代のようなグローバル時代において大事なことだと思います。

TPPに参加することで、日本の国民皆保険制度が崩れる可能性も否定できないという想田氏の指摘には、ぼくも同感だったので同氏のツイートをまとめました。

TPPによる国民皆保険制度崩壊の危険性 想田和弘氏 - Togetter

これらのツイートが注目されるとともに、想田氏のもとには「根拠のないことを言うな!米国陰謀論だ!」という反応もあったそうです(参考)。

WEB上のコメント欄に首を突っ込むような「政治的」な方々の間では、この手の反応はよくありますし、そのほとんどが“定型的”な批判です。実際にTPPが米国(を牛耳る悪の某)の陰謀なのかどうかはともかくとして、ここで想田さんが危惧している内容に対して陰謀論であるという批判は、批判として的をズレていると思います。とかくアメリカ対日本という構図で語られるTPPですが、ほんとうの対立軸はそうじゃないからです。そもそもTPPへのアプローチを始めたのは日本政府であるという指摘もあります(参考)。

アメリカ国内でも、TPPの認知度は決して高くありません。交渉は極秘に進められているというし、内容を把握しているのはひと握りの資産家だけで、政治家さえもよく分かっていない。約600人の企業顧問はTPP情報にアクセスできるのに、米国の議員はできないとか。“誰が”主導しているものなのか、そこが問題です。陰謀論云々じゃなくて。

詳しい出典はよく分かりませんが、アメリカの市民団体が、TPP草案のリークをもとにその不透明さと理不尽さに対する危機感を伝えている動画を見ました。想田氏をはじめ、日本で指摘されているTPPの危険性とまったく同じベクトルのことを、アメリカの市民団体が指摘しています。(※追記:ニューヨークの独立放送局Democracy Now! の映像だそうです。)



TPPの対立軸は「アメリカ」対「日本」ではない、ということがよく分かります。アメリカ人の多くはTPPについて知らされていないし、庶民がその内容を知ったらとても賛成できるものではないと。
TPPのほんとうの対立軸は、「グローバル企業の利益によって潤う1%の富裕層」対「99%の庶民」なのです。輸出で経済がどうのこうの言っていると問題の本質を見誤ることになります。きっとそうだと思います。

世界規模でいま何が起きているのか。インターネットはそれを想像するための情報の断片であり、編集権は自分にあります。ぼくは、ぼくなりの編集の結果として、世界がそのように見える。たとえばモンサント社は、特許侵害を盾に自国の農家だろうが他国の農家だろうが訴えます。それが遺伝子組み換え種子による彼らの世界戦略だからです(参考)。彼らに「国益」という概念はない。そういう視点で追っていくと、Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)という運動の意味も見えてきます。


TPPで儲かると目されているのは大企業、とりわけ、海外(人件費の安い途上国)の工場で部品や製品を作り、それを海外に輸出するグローバル企業(多国籍企業)です。グローバル企業にとって、国境という概念はあまり意味をなしません。経営者が日本人であるか、あるいはアメリカ人であるかという違いがあっても、営利を追求する彼らが、自国の富を循環する役割を担うとは限らない。というか、自国内だけでは思うように利潤が上げられなくなったからこそ、国境を無くそうとしているわけで。

TPPによって日本のグローバル企業が儲かったとしても、日本にお金を落としてくれるわけではありません。むしろ、その可能性は低いと思う。実際のところ大企業は、大幅なリストラで人件費を削減したり、下請け企業に単価の切り捨てを迫る一方で、莫大な内部留保を抱えています(参考:内部留保をめぐるいくつかの議論について)。

「儲かるところが儲かれば庶民にも金がまわってくる」というのは、TPPに限った話ではなく、安倍首相が提唱するアベノミクスの基本的な考え方です。それは自民党が長年やってきた、公共事業をはじめとする大企業優遇バラマキの手法でもあります。それによって、一億総中流という日本の隆盛がもたらされたのは事実です。しかし時代は変わりました。2013年の現代においては「儲かるところが儲かれば庶民にも金がまわってくる」という前提自体が、お花畑的な幻想、或いは庶民を欺く方便にすぎないとぼくは思います。


TPPの対立軸

TPPの対立軸 2013.03.04 Monday [政治・メディア] comments(0)
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