TPPに関する日米協議がどのように進展しているかについて 舟山やすえ議員質疑書き起こし

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安倍首相とオバマ大統領の日米首脳会談によって、交渉参加に向けて大きく動いた感のあるTPP問題。マスメディアでの報じられ方によると、まるで安倍首相がアメリカから何かを「勝ち取った」というような印象を受けますが(これとか)、実際のところはどうなんでしょうか。

政権交代した2009年から約1年間農水省大臣政務官を務めた舟山やすえ議員(現在はみどりの風所属。山形選挙区なので個人的に注目しています。)は、当時からTPPの問題点について言及していました。その時に読んだインタビューをもとに、このブログでも2年前にTPPに関する記事を書いています。(過去記事:TPPとまいにちの食べもの

2月27日の参議院予算委員会にて、舟山議員が今回発表された共同声明について質問をしています。先日その動画を見ました。首相が交渉参加へと舵を切る要因となったと言われている今回の日米首脳会談が、ほんとうに何らかの進展を意味するものであったのか、「聖域なき関税撤廃を前提とするものではない」なのか、その疑問点を分かりやすく指摘されていると思ったので、下記にて書き起こします。



参議院予算委員会(集中審議):舟山政調会長より書き起こし
舟山:TPPについて総理にお伺いします。
日米首脳会談におきまして、民主党政権下で得られた情報、状況と何が変わり、どのように事態が進展したのか、つまり今回新しく得られた追加情報と、今までとの状況変化についてお答えください。

岸田外務大臣:今回の首脳会談では、共同声明の内容3点を明示的に確認して、共同声明という文書を発行した。従来もさまざまな二国間交渉、情報収集に務めてきたわけですが、今回は対外的に文書という形で日米の首脳間が確認をした。こういった点が大きな前進であると我々は考えております。

舟山:いまご説明いただきましたけれども、内容は変わっておりません。明示的に文書で確認したと、いうことが大きく違うのだと思っております。
パネル(編注:日米共同声明の全文を記したパネル)をご覧いただきたいと思います。この文書をよく読みますと、赤で色を入れたところがポイントだと思っておりますけれども、(編注:日米共同声明の全文を以下に掲載。パネルの赤色部分は下線にて表記。)
両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。
 日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。
 両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。


舟山:まず、「全ての物品が交渉の対象とされる」ということ、それから「TPPの輪郭」これは当時の参加9カ国で合意したものでありますけれども、「そこで示された包括的で高水準の協定を達成していくこと」、これも以前と変わっておりません。その中身は、「関税ならびに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する」ということであります(編注:TPPの輪郭より)。つまり、関税撤廃と書いてあります。先ほども指摘がありましたけれども、あくまで原則、前提は「聖域なき関税撤廃」なんです。その上で、交渉次第で、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであると。前提は「聖域なき関税撤廃」、その上で、交渉次第で何かが取れるかもしれない、そういったレベルのものでありますので、「聖域なき関税撤廃を前提とするものではない」ということにはならないと思っておりますけれども、何を根拠に聖域が取れたと、「聖域なき関税撤廃が前提ではない」と感じたのでしょうか。

安倍首相:わが党の公約は「聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉参加には反対する」ということでありました。そのことについては、先ず冒頭オバマ大統領に、わが党はそれを公約として選挙を戦い政権をとったという話をしました。そして国民の皆さまとの公約は違えることはできないということもお話をし、6項目について話をしたわけであります。さらに、共同声明における第2パラグラフについてお話をいたしまして、それを文書化していこうということになったのでありますが、そこで出てきたのがこの共同声明でありますが、この共同声明の中において、一定の農産品そして米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在するということを認識するということが書き込まれておりますので、これは「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められていない」ということでありますから、聖域なき関税撤廃を前提とはしていないと判断したわけであります。

舟山:センシティビティが存在するということを認識するということと、センシティビティを認めますということとは違うと思います。例外品目を認めますとは、ここには一言も書かれておりません。その存在をお互いに認識しましょう、主張はしてもいいです、ということでありまして、それが認められるということは何も書いてありません。総理は、「日本は例外が認められなければ交渉には参加しません」とはっきり表明したのでしょうか。

安倍:要するにですね、交渉の中において、例外となる品目を勝ち取ることができないとなっていれば、それは当然交渉には参加できないわけであります。しかしそれは交渉次第ですよ、ということになれば、参加できるという判断になるわけであります。つまり聖域なき関税撤廃ということは、まったく全て関税を撤廃することはできません、それが参加の前提条件ですよ、ということになれば、参加できません。これがまさに聖域なき関税撤廃であると。私はそうではない、つまり交渉によって例外品目を勝ち得ることも可能であるという認識のもとに、聖域なき関税撤廃ではないという認識に至ったわけであります。

舟山:そのレベルで言えば、民主党政権下でもまったく状況は同じでした。交渉次第で例外は勝ち得ることができたかもしれない、だけどそこの確信が持てないということで、ずっと検討を続けて、最終的には交渉参加に踏み切らずに終わったということだと思っております。最終的な結果は交渉次第だということは以前から書かれておりますし、今回の訪米で総理が初めてその言葉を勝ち取ったわけではなく、状況は何も変わっていない。くり返しになりますけれども、原則前提は聖域なき関税撤廃、その中で交渉次第では何かが取れるかもしれないという程度でありますので、これだけで「大丈夫」「聖域が取れる」「公約が守れる」とはとても言えないということを強く申し上げたいと思います。
そして、共同声明の3パラ目をご覧いただきたいと思います。「TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する」とありますけれども、これは事前協議のことでしょうか。

岸田:「TPP参加への日本のあり得べき関心」という言葉ですが、日本はまだTPP交渉に参加しておりません。交渉参加に関心を持っているということ、関心そのものを指しており、具体的な事項を指しているわけではありません。

舟山:文脈をみますと、これは日本の関心というよりは、アメリカから何を言われているのか、それに対してどういうことができるのか、そういったことの関心ではないかと思っております。中身的には、自動車部門、保険部門といったものが取りあげられておりますが、その他においても非関税措置 日本はどこまでやる用意があるのか、というような文面だと思っております。
さらに大事なのは、「協議は進展を見せている」と書いてあります。そういった関心事について協議がどれくらい進展しているのか。具体的には前政権の時から、自動車について、保険について、牛肉、この3分野については具体的にさまざまな意見交換をしていた、何にアメリカは関心を持っているのか、アメリカの得心を得るためにがんばっているという答えを当時の政府からいただいておりましたけれども、どこまで進展しているのでしょうか。

岸田:ご指摘のように、3パラ目がアメリカの関心事というのはその通りでございますが、内容については従来からも日米間の協議はずっと続けてきました。その協議を今後も続けていくということを確認した部分だと我々は理解しております。

舟山:そこにちゃんと対処をしなければいけないと思うんです。何らかの回答を持たなければいけないということだと思っております。つまり、TPP交渉に入る前に、事前に入場料、何らかの妥協をしなければいけない、何らかの回答をしなければいけない、そういう事前約束がこの3パラ目だと思っております。これはアメリカと他国との交渉の中でよく存在するものでありまして、例えば米韓FTAにおいても韓国では先決事項として協定に入る前に幾つかの件案について事前に要求をのんで、それに応えていくという約束をしているということであります。これはまさに入場料を事前に払うということに他ならないと思っております。聖域なき関税撤廃を前提としておりますし、その他のさまざまな非関税分野に対してもいろんな懸念が残っている、解決しなければいけないことが残っているということで、現段階でTPP交渉参加に対しては断固反対できないということになると思いますが、いかがでしょうか。

岸田:先ほど申しましたように、3パラ目は今までやってきた日米間の協議を引き続き行うという主旨であります。協議を行うということ、対処するということ、これは当然あることだと思います。結論を出すということではなく対処していくということは、協議を続けていく以上、当然ある話だと思っております。

舟山:以上で終わりますけれども、大変な問題を抱えているということがお分かりになったと思います。以上で終わります。


なんだか狐につつまれたような、よく分からないやり取りですが、首相が交渉参加の条件として挙げる「聖域なき関税撤廃ではない」という見解が、根拠の曖昧な一般論によるものであることがこの答弁からは感じ取れます。日本の国会ではおなじみになった「言葉あそび」ですね。植草一秀氏はこれを「言葉の綾をかいくぐる詐欺的手法」であると指摘しています。
超重大テーマのTPPで日本国民を欺く安倍政権 - 植草一秀の『知られざる真実』

まったく同感です。ぼくには、国会に立つ与党の政治家がいったい何を言っているのかほとんど分かりません。

というか、「聖域なき関税撤廃ではない」という条件って、自民党が選挙時に掲げたという6項目のうちのひとつでしかないわけで、その一つですらこのような曖昧な官僚答弁に終止しているような人たちが、あのアメリカ相手に交渉をして残りの5つを守れるとは思えないのがふつうの感覚だと思うのですがどうでしょうか。

ちなみにTPPに関する自民党の公約とは次の6つです。
  1. 聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する。
  2. 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
  3. 国民皆保険制度を守る。
  4. 食の安全安心の基準を守る。
  5. 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
  6. 政府調達・金融サービス等は、我が国の特性を踏まえる。


個人的にはISD条項こそが、モンサント社のやり口にも通じるアメリカ式の世界戦略(植民地化政策)の武器であり、これに合意してしまうと他の5つは簡単にふっとんでしまうくらいの恐ろしいものであると思うのですが(参考)。しかしながら、前の首相はISD条項のことをよく理解していなかったという話もあります。たとえば実際にISD条項が結ばれている米韓FTAを、TPPの前例としてよく分析する必要があると思うのですが(参考)、そういった議論があまりなされているようにも見えない。「交渉次第」と言うけれども、そもそも何を交渉するべきなのかを分かっているのかどうかすら疑わしいのだから、そりゃこちらとしては不安です。

と思っていたら、安心してください。首相からの説明がありました。
首相 条件は聖域なき関税撤廃かどうかだ - NHKニュース

安倍首相によれば、「自民党の選挙公約を正確に言うと、『聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉には参加しない』ということだ。それ以外の5つの項目は、自民党の目指すべき方向を書いてある『Jーファイル』に書かれている。交渉参加の条件は、聖域なき関税撤廃かどうかであり、残りの項目は、最終的に条約として批准するなかにおいて実現していく立てつけになっている」そうです。なんと、残りの5項目は公約ではなかったと。民主党のマニフェストが実現されなかったとさんざん批判していた自民党ですが、なるほど、はじめから公約ではないのならば批判される云われも無いということですかね。

わざわざ「これは公約ではない」と宣言するということは、たとえば国民皆保険制度を守るというのも公約ではないということを念押ししており、守れる自信がないという態度の現れじゃないかと勘ぐりたくもなります。アメリカのような悲惨な状況になる可能性は否定できない。
TPPによる国民皆保険制度崩壊の危険性 想田和弘氏 - Togetter

公約に対するこのような首相の解釈が「詐欺的手法」であるかどうかは、選挙時における自民党のTPPについての態度を思い出しながら、各人が判断するしかありません。ただし、こういう「解釈」をする人たちが、TPPの「交渉」にあたるということも忘れずに。


TPPに関する日米協議がどのように進展しているかについて 舟山やすえ議員質疑書き起こし

TPPに関する日米協議がどのように進展しているかについて 舟山やすえ議員質疑書き起こし 2013.03.01 Friday [政治・メディア] comments(0)
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