アトムス・フォー・ピース トム・ヨーク インタビュー書き起こし(原子力発電に関して)

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レディオヘッドのトム・ヨークとレッチリのフリーらによるバンド「アトムス・フォー・ピース」が、初となるアルバムを2月20日に日本先行リリース。これを記念して、トム・ヨークとナイジェル・ゴドリッチのインタビュー動画がHostess Entertainment のチャンネルで公開されています。

バンド名の「Atoms For Peace」という言葉は「平和のための原子力」と訳されます。これは、アメリカ合衆国のドワイト・D・アイゼンハワー大統領が、1953年12月8日にニューヨークの国際連合総会で行った演説で提唱した、核に対する考え方です(出典)。

インタビュー中でトムは、自身の父が原子物理学者でありセラフィールドにも出入りしていたことも含め、原子力発電についてけっこう突っ込んだ話をしています。こういうことにさらっと答えられるミュージシャンってかっこいいなと。




以下、書き起こし(というか字幕の書き写し)。

ーーバンド名は『ジ・イレイザー』の収録曲のひとつに因んでいますね。アイゼンハワー米大統領が提唱した「平和のための原子力」のコンセプトは示唆に富んだコンセプトですが、どういうニュアンスでとらえているのですか?

トム:言うまでもなく、今の時代においては多方面で非常に深く共鳴するコンセプトだよね。日本で、北朝鮮で、イランで。そしてこういうナイーブな、1950年代末に我々に原子力を強引に売りつけた手法と、その行く末にもね。
僕の父は原子物理学者で、インペリアル・カレッジ・ロンドンで学んで、1950年代末に、何の防護処理もせずにプルトニウムを入れた試験管を持って歩き回ってた。それが普通だったんだよ。危険だってことを知らなかったのさ。
だからそういうナイーブさがあって、そこが気に入った。
バンドをアトムス・フォー・ピースと命名したかった大きな理由のひとつは、そのナイーブさと、裏に潜んでいる闇、そのナイーブな考えがどういう結末に辿り着き、どう変質したのかっていう対比にあるんだよ(笑)。

ナイジェル:それってどういうことなのさ?

トム:どういうことかって?(笑)
でもそれと同時に、「平和のための原子力」という言葉の響きからして、一種の不思議な運動エネルギーを示唆するだけでなく、静けさをも表現しているよね。それは、アイゼンハワーの提唱とは一切関係ない。
また他方では、今我々が直面している危機にも思索を向かわせる。いったいどうやって電力を作り出すかっていう問題にね。スーパーコライダーだとか、人類を救うクリーンなエネルギー源を探し出せるのか、もしくは無理なのか。

ーーご存知のように日本では2011年3月11日の大震災の影響で、福島原発で事故が起こり、多くの住民が今もなお避難生活を余儀なくされ、今後の原子力発電所の在り方について多くの議論がなされています。
アトムス・フォー・ピースという名前のバンドとして、こうした日本の現状や、原発の在り方についてどのように思われますか?

トム:さっきも言ったように僕の父は原子物理学者で、英国のセラフィールド(使用済み核燃料再処理施設)にも出入りしていたんだ。原子物理学者の職を離れてからも同じ分野で仕事を続けていて、セラフィールドの施設内に積まれた使用済み燃料棒を見に行って、心配顔で家に戻ってくると「あそこで爆破事件があったりしたら大変なことになる」なんて言ってたものだよ。
それは世界共通の問題であって、使用済み核燃料の処理方法を我々は見つけられずにいるんだ。だから原子力は経済的に存続不可能だし、極めて危険だ。
それでいて、環境保護活動家である僕の親しい友人には未だ、地球温暖化のプロセスを阻止する唯一の方法だと主張する人もいる。

ナイジェル:そして、化石燃料への依存を断つ唯一の方法、とね。

トム:うん。でも全てが色々なしがらみに縛られていて、ドイツが脱原子力を打ち出して、原子力開発能力を放棄すると決めたことは、大きな前進だと思うし、日本も同じ道を選んでくれるよう願ってる。それ以外の道を選ぶことは、狂気の沙汰だよ。
それが僕の意見なんだけど、どういうわけか、物事はそうシンプルじゃないんだよね。そう訊いてる。
その一方で英国はと言えば、そっちの状況のほうが不安だよ。これは事実なんだけど、英国政府は内密に、原子力は存続不可能だと認めているんだ。核廃棄物の処理費用を負担できないからさ。経済的に成立しないし、施設を建設しようという会社も現れていない。
そんなわけで新しい施設は建設されないんだけど、政府はそれを公表できない。腰が引けている印象を与えたくないんだ。エネルギー危機から脱却する策がないとバレてしまって票を失うから、それはしないんだよ。
ただ、個人的に言わせてもらうと原子力に未来はないんだけど、原子力関連のロビー(政治活動)がいかにパワフルかってことを忘れちゃいけない。業界が衰退したら、大勢の人が莫大な金を失うし、石油業界と同じで、あらゆる方法を使って、原子力は存続可能だと見せかけるだろう。それは嘘っぱちなのにね。

ーーアトムス・フォー・ピースはしばしば「スーパーグループ」と呼ばれていますが、この呼称を使われることについて、どんな風に感じますか?

ナイジェル:トムは大好きなんだ!

トム:うん。僕の夢だったんだ。

ナイジェル:だからこのバンドを結成したんだよ。

トム:ほら、誰だっけ?

ナイジェル:エマーソン・レイク&パーマー?

トム:そうだ、エマーソン・レイク&パーマー。

ナイジェル:お気に入りのバンドだから、彼らみたいになりたいのさ!
困ったもんだよね。何をやろうが、どんな風にやろうが、レッテルを貼られてしまう。自分が果たす役割にレッテルが貼られ、自分が作る音楽にレッテルが貼られ、付き合う人たちにレッテルが貼られ…

トム:だとすると、僕のラップトップもスーパーグループの一員ってこと?

ナイジェル:ああ、だからスーパー…

トム:スーパー・ラップトップだ。

ナイジェル:うん。っていうか、こうやって続けざまにインタビューを受けると仕方ないことなんだけど、実は前のインタビューをしたジャーナリストがその質問をして、しかも次の質問が「好きなスーパーグループは誰ですか?」だったんだよね(笑)。僕らは…

トム:答えは短かったよね。

ナイジェル:ひと組も思い浮かばなかったんだ。スーパーグループって本当に奇妙なコンセプトで、彼はクリームが究極のスーパーグループだと言ったんだけど、クリームなんか好きじゃないし。

ーートラヴェリング・ウィルベリーは?

トム:そうだった、彼らがいた!

ナイジェル:僕らの場合、クリームよりトラヴェリング・ウィルベリーに近いね。

トム:そんなこと言わないでくれよ!

ナイジェル:あ〜あ、参ったね(笑)

ーー『Amok』とアルバムを命名した理由を教えて下さい。

トム:おかしな話だけど、「amok」という言葉についてすごくダークな印象を抱いている人がいることに気付いていなかったんだ。僕にとって「amok」はすごく楽しい感じなのにね。すごく茶目っ気があって。なのに、とあるオランダ人に「amokという言葉はインドネシアに関係している」と言われたんだよ。

ナイジェル:ほら、インドネシアはオランダの植民地だったからね。

トム:うん。それで「amok」はインドネシア人が通りに出て、無差別に人を殺すっていう意味なんだってさ。植民地支配の抑圧に耐えられなくなって。

ナイジェル:うん。「run amok」って言葉は字義的な訳らしいよ。オランダ語でまさに「血に飢えて荒れ狂う」って意味があるとか。ヤバいよね。僕らはどっちかっていうと、子供たちが走り回ってる感じをイメージしてたのに。

トム:うん。楽しそうにね。ブラブラしてる感じ。
これじゃ君の質問に答える上で、全然役に立たないね。

ーー日本のファンのみんなにメッセージをお願いします。

トム:今年もぜひ日本に行けたらと思っているし、その時にみんなに会えたらいいね。それに、前回フジロック(2010年)では、すごく楽しませてもらったから、またああいう感じのを頼むよ!

ナイジェル:いや、あれ以上のを頼むよ!

トム:よろしく


ちなみにこの「スーパーグループ」の存在を、ぼくはつい最近知りまして(そんなんで音楽ファンといえるんだろうか…)、2010年のフジロックの映像を見て、ぶっとびました。



もともとはトムのソロ・アルバム『The Eraser』をライブで演奏するために結成されたバンドだそうですが、いやあ、あのアルバムよりぜんぜん好きです。肉感的で血湧き肉踊るようなリズムに、呪術的なボーカル。ぼくなんかの凡人が理解し得る世界を飛び越えた、わけのわからないところに在るような音楽。こういうのをぼくはヤバい音楽と呼んでいます。子供たちが楽しそうに走り回ってるイメージはぜんぜんしないけど(笑)。

アトムス・フォー・ピースの1stアルバムはこちら。

Atoms For Peace
XL.
発売日:2013-02-25



アルバムもいいんですけど、このバンドはライブがすごそうですね。これだけのヤバい音楽はそうそう無いと思います。

アトムス・フォー・ピース トム・ヨーク インタビュー書き起こし(原子力発電に関して)

アトムス・フォー・ピース トム・ヨーク インタビュー書き起こし(原子力発電に関して) 2013.02.27 Wednesday [音楽・映像] comments(0)
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