選挙のジレンマ

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けっきょく個々の政策についてよりも、「人」で選ぶしかないってことなんですかね。前回の記事で、選挙の争点は自分で決めるものだなんてことを書きましたが、実際問題としては、自分が住む選挙区に自分の感覚と近い候補者が立つとは限らないわけで。まだ告示前なのでどうなるか分かりませんが、山形なんて、いつものように民主・自民・公明・共産しか選択肢が無い可能性が高くて、そうなると小選挙区制ってよく分からない選挙制度だよなと思います。自分の感覚と近い脱原発の候補を選ぼうといっても、選択肢が無ければ誰を選んだらいいか分からないじゃないですか。

12月の総選挙において、民主党は「無い」ってのが有権者のコンセンサスになってると思うし、まあぼくもそうなんですが。ちょうど2009年の総選挙で自民党が「無い」だったのと同じように。でも、小選挙区に生活党(国民の生活が第一)の候補者という選択肢が無い場合は、有権者は何を選び得るんでしょうか。民主党は無いけど、自民党はもっと無い。政策だけみれば共産党しかないけれど、絶対に当選はしない。

おそらく山形1区から立つであろう鹿野道彦。代表選での演説を聞いても、古いタイプの政治家だしぜんぜん期待してないけど、自民党にしたくないという理由だけで選ばざるを得ないかもしれません。TPPには慎重であろうという希望的推測を含め、あっちよりはマシだろうってだけでポジティブな意味合いは無いのですが。「民主党は無い」という空気に呑まれて、民主に投票するなんてダッセーぜというだけの理由で、自民とか維新に投票するようなことだけは避けたい。

国民が直接的に政治に関わる手段は選挙しかないということをよく聞きます。いくらデモをしたって、署名をしたって、政治は変わらないと。でもその唯一の手段である選挙において選択肢が無いというならば、民意っていったい何なのか分からなくなってしまいます。現行の選挙制度って、ほんとうに民意を反映できるように出来ているんでしょうか。

ツイッターやSNSなどのインターネットによるつながりが、有権者のリテラシーを底上げしていることは間違いありません。でもいくら小沢一郎の裁判が理不尽なものであることを知り、無罪判決が当然であることに同調し、検察とマスメディアの理不尽さに腹を立て、自分と子供たちの生活を守りたいならば生活党しか無いだろうと思い、生活党をスルーし続けるマスメディアを横目に、さあ選挙でぼくたちの民意を示そう、と言っても、自分の住む選挙区に生活党の候補者が立っていなければ選びようがありません。現在生活党の所属議員は50数名なので、全ての選挙区で候補者が立つことはないでしょう。

比例区があるじゃないかという意見もあります。その通りです。じゃあ、もうぜんぶの議員を比例代表制での選出にしちゃったほうが分かりやすいと思うのですが、だめなんでしょうか。考えてみれば、現行の選挙制度ってどういう経緯で出来上がったのか、ぜんぜん知りません。

そういえば、アメリカ大統領選の各州選挙人総取りっていうのも不思議なしくみだなあと思いながらオバマの勝利を眺めていたのはつい先日です。ジャーナリストの堤未果さんは、アメリカでの大統領選挙を「ショーとしての政治が娯楽性を増す裏で、民主主義の根幹である選択肢が失われつつある」と警鐘を鳴らしています。
「アメリカ大統領選挙2012〜切り捨てられる少数政党」 週刊現代 掲載記事 - ジャーナリスト堤未果のブログ - Yahoo!ブログ

小選挙区制っていうのは、小さな政党にとって不利な仕組みだそうです。なるほど考えてみればそうかもしれません。候補者をバンバン立てられる議員数と資金のある政党ほど有利になる。小選挙区制がメインで比例代表制はおまけみたいな扱いということは、まだまだ利害関係による組織票が選挙を実行支配しているということなんでしょうか。何の利害関係にも組織票にも属さないために、消去法で受動的に選択するしかない小選挙区での1票と、比例区で能動的に投票する1票が同じっていうのは、どうも納得がいかないような…。

いや、同じじゃないですね。現在、衆議院議員の定数は480人で、選挙制度による内訳は、小選挙区選出議員300名、比例代表選出議員180名だそうです。小選挙区のほうがウェイトが大きい。議席数が多いということはすなわち国会での発言力が高まる。


なんてことをぐだぐだと考えているうちに、なるほどやっと分かりました。野田首相が解散の条件として挙げた議員定数削減の意味が。「0増5減」で小選挙区での定数を5議席減らすことが目玉になっていますが、民主党はそれと同時に比例定数の40議席削減をセットで盛り込んでいます。小選挙区よりも比例代表制の議席数を大きく減らすということは、そのぶん小選挙区での議席の比重が増して、小さい政党がますます不利になるということ。つまり、既得勢力にとって有利であり、少数派の意見をますます軽んじるという方向性なわけです。民意はいまよりも反映されにくくなる。

これを見るとその意味が分かります。
衆議院が解散し事実上の選挙戦がスタート。政党が乱立する乱立する状況ですが、比例区でどの政党に投票するか決まっている? - Yahoo!みんなの政治

ヤフーみんな政治って、決してリベラルな意見が集まる場所ではないけれども、このアンケートでは圧倒的に生活党の支持が多い。過半数を超える52%というのは自民党15%を大きく引き離す数字です。マスメディアの世論調査とあまりにも異なりますね。もちろんネット投票のほうが真実であるというわけではなくて、マスメディアはマスメディアなりに、ネットはネットなりに歪んでいるという結果なのでしょうが。それでも。

首相は、一票の格差を是正するための定数削減だと言っていますが、こうして見るとどうもそうは思えない。一票の格差という問題については、詳しく中身を知らないので今度気が向いたら調べることにしますけれども、ふつうに考えると、全ての議席を比例代表制にしちゃえば一票の格差は無くなるのでは??とすると、比例定数を削減するということは逆に一票の格差を広げることになるのでは?よく分かりませんが。ともあれ、少数派や弱者の声が届きにくくなるっていうのは、民主主義とは逆行していると思います。

フレーズに騙されているだけなんですね。単純に、政治家は金に汚ない、給料を貰いすぎてケシカランというイメージだけで、議員定数削減=いいこと、政治家自身が身を切るみたいに思っちゃうけれども、もともと議員数と資金を確保して小選挙区で勝てる党にとっては、比例区での議員数削減なんて痛くも痒くもない、というかますます優位に立てる訳です。

こういうことを、ぼくらはほとんど知りません。マスメディアが報じないので。しんぶん赤旗は、ぼくの中では震災後にもっとも信頼を増したメディアのひとつです。議員定数削減についての記事も納得です。
「0増5減」 小選挙区固定化・比例削減ねらう - しんぶん赤旗

その一方で、共産党の、全ての選挙区に候補者を立てるというやり方っていうのもなんか違う気がするんです。震災を経たことで、政策だけを見れば共産党でおっけーなはずなのに、そういう気にもならない。なぜなんでしょうか。ぼくはそこにずっと引っかかっていたんですが、少しだけ分かった気がします。共産党が全ての選挙区に候補者を立てるというやり方って、イデオロギー>人なんですね。本人には失礼ですが、候補者自身が立ってるというよりも共産党が立ってるという印象が強い。

選挙って、政策で選ぶのか、人で選ぶのかというと、たぶん両方なんですよね。どちらかだけじゃなくて。とくに小選挙区という制度の上では「人」の占める割合が大きくなる。共産党にはこの視点が欠落しているように感じるのです。ただ、野党として居てくれないと困る存在ではあります。


堂々巡りになりますが、けっきょくは「人」で選ぶしかないようです。でもそれっていちばん難しいですよね。メディアを通した人物像が「人間的魅力」とはかぎらないわけで。選んだ後になってから、裏切られただの騙されただの言うのは簡単ですが。正直言ってぼくは人を見る目に自信がありません。限られた選挙の期間と限られた情報だけで、どれだけその「人」のことが分かるかなんて、懐疑的にならざるを得ない。だから所属する政党である程度推測するしかないのでしょうし、多くの人はそうしているのだと思います。

けど例えば山形1区に民主党から鹿野道彦が出馬したとして、他に目ぼしい人もいないので消去法(TPPには慎重であろうという希望的推測)で鹿野氏を選んだとします。その場合、ぼくは鹿野道彦を選んだことになるのか、民主党を選んだことになるのか。後者ならば、野田民主党を承認したという意味になるのか。理屈としては、鹿野道彦を選んだというにすぎないはずですが、実際問題としては民主党執行部はそうは受け取らないでしょう。執行部が信任されたと解釈して、自分たちのやりたいことをやるための根拠にする。鹿野道彦がTPPに慎重だったとしても、執行部の都合で推進するでしょう(民主党が政権を執ることは無いでしょうけど)。

さらに、野田首相は衆院選公認の条件として消費税増税やTPP賛同など党の方針に従う誓約書の提出を要求。承服しかねる鳩山氏は不出馬を表明、そして引退へ。ってもう執行部に歯止めをかける人たちすらいなくなった民主党は自民党と何が違うのでしょうか。鳩山グループの他の議員はどうするんでしょうね。
ほんとうに「人」で選ぶ意味があるのか。ああやっぱり堂々巡り。

いずれにしても憂鬱な選挙になりそうです。

選挙のジレンマ

選挙のジレンマ 2012.11.21 Wednesday [政治・メディア] comments(0)
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