ふたたび鳩山政権をふり返る

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7月20日金曜日、再稼働反対の官邸前抗議行動に鳩山由紀夫元首相が参加しました。「官邸と国民の声があまりにもかけ離れてしまっている」「これから、みなさん方の声をおうかがいをして、私1人で官邸の中に入らせてもらいたいと思っています。みなさんの声をぜひ伝えたいと思っています」と発言し、官邸内の藤村官房長官に「民意を直接野田総理に伝えられる機会を作ってもらいたい」と伝えたそうです。

首相官邸前での原発再稼働反対行動での鳩山由紀夫元首相の発言 - 赤旗政治記者
120720 首相官邸前抗議 鳩山由紀夫議員スピーチ Ch5(動画)
「再稼働反対大集会」 - 鳩山由紀夫オフィシャルホームページ

「野田総理は市民の声を直接聞いた方がいい」「民主主義の新しい流れを無視するべきではない」と決然と語った(朝日新聞官邸クラブ)と伝えられるも、党内は冷ややかな反応であるとか言行不一致であるとか、さまざまな反響を呼んでいます。

ぼくは、このニュースをツイッターでリアルタイムに知った時の気持ちを以下のようにツイートしています。正直な気持ちです。
絶対に叩かれるし揶揄されることが分かっていながら、のこのこと官邸前デモにやって来た鳩山さんに感動した。この人ほど誠実な政治家をぼくは知らない。人がよすぎるがゆえに政治家には向いていないのかもしれないが、今回の行動はかっこいいよ。断固支持。
こういう人を周りが支えないといけなかったんだよ、民主党は。


ところで、この鳩山氏の参加には伏線があって、デモの2日前に行われたこのインタビューから繋がっています。もっと言うなら、ここで語られている民主党崩壊の理由から繋がっている。ジャーナリストの岩上安見さんによる、鳩山由紀夫氏へのインタビュー。期間限定で無料公開されています(期間終了後は会員限定公開)ので、視聴はお早めに。※終了しちゃいました。
2012/07/18 鳩山由紀夫議員インタビュー - IWJ Independent Web Journal

訥々とした喋り口から人柄まで伝わるようなインタビューになっています。鳩山=ルーピーと云う人にはまず見てほしい。とにかく鳩山さんはバカ正直な人であると、ぼくは思います。この映像からもそれが伝わってくる。と、まあそれはさておき、鳩山氏個人の評価は別にしても、歴史的な政権交代から鳩山政権はなぜ瓦解したのかについて、元首相自身の口から語られるというのは価値あることですし、そこから現在の原発をめぐる問題にも繋がる、この国の問題点というものが浮かび上がってきます。それをうまく引き出した岩上さんに拍手。

このインタビューをちゃんとご覧になった人ならば、大手紙が報じたこの記事がいかに歪んだ印象操作であるか分かるはずです。
<民主>鳩山氏も「離党カード」、政権ゆさぶる - 毎日新聞
「離党カードをちらつかせた」とか、この映像からぼくが受けた印象とはぜんぜん違います。どちらかというと、岩上さんにそそのかされたって感じですよね。だいたいあの内容で、なぜそこだけを取りあげるのか。そこまでして政局にしたいのか。インタビューの核は、鳩山政権がなぜ瓦解したのかという点です。そこのところに大部分の時間を割いているわけだし、内容的にも非常に示唆に富んだものになっている。現在の日本が抱える構造的問題を考える上では、無視して通れない話になっている。なぜそこに少しも触れないのか。そこを徹底的に検証しないで、現在の野田政権の問題点をきちんと捉えられるのか。意識的に避けているとしか思えません。ちなみに出典元であるIWJの名前を明記せず「インターネット番組」としているのもフェアじゃないですね。


鳩山氏の辞任から2年。いまや民主党は政権交代時の彼らとは別人になってしまいました。財務省の意向にしか耳を傾けない野田政権は、国民からもそっぽを向かれ、崩壊直前と言っていいでしょう。小沢一郎とそのグループは離党し「国民の生活が第一」を結党。マスメディアは相変わらず政局的な報道しかしていませんが、3党合意により一体化した「民自公」と、「国民の生活が第一」との対立軸というものを、ぼくらは有権者としてきちんと認識しておく必要があります(ここで書いたようなこと→これからの政治のはなし)。次の投票の指針を、選挙前になるとワンフレーズがくり返されるメディアの喧噪に騙されずにしっかりと見ないといけない。

いまここで鳩山政権をふり返ることはとても大事だと思います。

というわけで、再度IWJのインタビューより。
2012/07/18 鳩山由紀夫議員インタビュー - IWJ Independent Web Journal
(無料公開期間が終了したので、現在は会員のみ視聴可となっています。有益な映像を提供し続けるIWJの活動を支えるためにも、ぜひサポート会員になってご覧下さい。)
岩上さんの要点ツイをまとめたものがこちらにあります。
2012/07/18 IWJ鳩山由紀夫議員インタビュー - togetter

同togetterより
岩上 民主党はなぜこれ程までに変節した?
鳩山 私の不徳の致すところ。既得権と戦おうとして勝てなかった。アメリカにものを言い、官僚主導を脱却しようとした。執行部はこれを反面教師として、既得権と戦わないようにと。

岩上 なぜ辺野古は失敗したのか?誰が抵抗したのか?
鳩山 まわりをぐるっと包囲された。県外を探そうとしていたのは官房長官だけ。アメリカが反発したというよりは、その意向を忖度して、官僚が鳩山おろしを。主に外務省と防衛省。官僚だからケンカ腰で来るわけではない。『探したけどありませんでした』などと、どんどん範囲を狭めてくる」

岩上 日本の官僚達は、ボスはワシントンにいると刷り込まれている?
鳩山 岩上さんは言い過ぎだが、そうだと思う。孫崎享氏の『戦後史の正体』を面白く読ませていただいている。日本の戦後は『対米依存派』と『対米自立派』の戦いだったと。対米依存の吉田茂などは長く政権の座につける。一番悲惨なのが石橋湛山。理由なく公職追放に。


この期に及んで離党しない鳩山さんを歯がゆく思う気持ちもあります。いまの民主党を立て直せるわけが無いじゃないかと。何をそんなにこだわっているのかと。インタビューを見て分かったのですが、鳩山さんは自分が一から民主党を作ったという自負とそこへの愛情があるようです。それから他人を信じすぎるんですね。菅首相の不信任決議案騒動の時も右往左往して、どこまでお人好しなのかと呆れたことを思い出します。

民主党瓦解の理由を問われ、「私の不徳の致すところ」としつつも、現執行部の変節は、財務省をはじめとする官僚の意向におもねる政治、アメリカの意向を忖度する政治であると指摘。つまり鳩山政権が9ヶ月で崩壊したのは、既得権へと切り込んだためにそれに反対する勢力に負けたということ。財務省をはじめとする官僚、経団連、マスメディア、党内の裏切り。そしてアメリカ。鳩山さんはこのインタビュー中で「忖度する政治」という言葉を何度も口にしています。

これは以前から内田樹さんあたりが指摘していたことほとんどそのままです。それを当事者である元首相が、自分の失敗を認めて言及したということは、意味のあることだと思うのですが、このことをどこのメディアも取りあげないという事実が、マスメディアも既得権であるということの信憑性を高めています。

鳩山さんは5月の時点で、内田さんの記事を引用してこうツイートしています。
鳩山由紀夫氏のツイートより
今も「最低でも県外」という気持ちに変わりありません。しかし「忖度」がもし存在するならその道は遠のくばかりです。─「忖度」する人たち(内田樹の研究室) http://bit.ly/Jc0IUK


さらにインタビュー中で鳩山さんは「既得権と対峙しない民主党には存在価値がない。自民党と同じになってしまう」と述べています。彼は、実際にそれをやろうとしていました。インタビュー中では詳しく語られていませんが、年次改革要望書の廃止、事務次官会議の廃止、会見のオープン化など具体的な処方を伴って。年次改革要望書の廃止については過去記事を参照ください。これは「対米自立」の象徴だったはずです。

これらの革新的変化は菅政権以降、すべてなし崩しになりました。自民党政治への逆戻り。アメリカによる日本改造指令とでも言うべき年次改革要望書は日米経済調和対話として復活、それはTPPへと繋がっています。鳩山さんはTPPの危険性として、遺伝子組み換え企業の進出と同社の訴訟戦略、経団連米倉会長との関係を指摘しています。まさか鳩山さんの口からモンサントの話が出るとは思いませんでした。モンサントについては過去記事を参照ください。TPPは、アメリカ(多国籍企業)による日本の植民地化に等しいとぼくも思います。

言葉ヅラだけでなく、このインタビューでの語り口からは誠実さを感じるし、マスメディアは報じなかったけれども実際の政策で「対米自立」を示していた鳩山氏。民主党の崩壊は、彼を追い込み「対米自立」を捨て去った時から始まったと言えます。政権交代でぼくたちが選んだ民主党は9ヶ月しか持たなかった。菅政権以降の民主党はまったくの別ものです。「民主党」という括りで一緒くたにして見るとそれが分からなくなります。そうじゃなくて、「対米従属」「対米自立」という大きな流れで捉えると、鳩山政権がやろうとしたこと、やれなかったことが分かってきます。こまかいことよりも、まずはその大まかな流れを見ることが必要です。

戦後史の正体』の著者である孫崎享氏は、「日本の戦後史は、アメリカからの圧力を前提に考察しなければ、その本質が見えてこない。」と指摘しています。
「戦後史の正体」について 孫崎享(動画)より要約
日本が独立した1945年から、「対米自立」と「対米追随」対立は続いてきた。
この日米関係の特色は、アメリカが「この人は望ましくない」と日本側に伝える。そうすると日本人が「望ましくない人」を排除していく。その道具のひとつが検察。もうひとつは新聞。新聞がターゲットの人格批判をして、排除されるのが当然という空気を作っていく。そうしてメディア・官界・政界が一体となって米国に追随していく。


小沢一郎に対する検察の異様な態度を見ると、納得できる話です。新聞もしかり。これはまさしく「忖度する政治」そのものですね。民主党が打破しようとしてできなかったことです。できなかった結果、いままで以上に劣化した思考停止の状態で「忖度」するようになってしまったというのは笑えません。

下記記事は、内田樹さんによる民主党についての総括です。
プレス民主でのインタビュー 「民主党への建設的提言 各界識者に聞く」 最終回 今求められているのは国の統治機構について率直に言えるリーダー - 内田樹の研究室より
鳩山さんの最大の誤算はアメリカの日本に対する影響力の強さを見誤ったことでしょう。鳩山さんは、日本はアメリカに軍事的に従属しているので、主権国家であれば当然要求できることさえ要求できない立場にある、とはっきり言うべきだったと思います。日本は敗戦国であり、国土を外国軍に長期的に占拠されており、国防や外交について自己決定できる主権国家ではないのだ、ということを明言すべきでした。
今の日本の統治者に必要なことは、「ほんとうのこと」を言うということです。そこからしか始まらない。敗戦国なんだからしかたがないんです。日本は主権国家でない。安全保障、国防・外交に関しては、日本の国益を最優先するという政策選択ができない、と。日本はこうしたいが、アメリカがそれを許さない。だからアメリカに従うしかない、とはっきり言うべきです。敗戦国の屈辱の上にしか国家は再建できません。主権国家でない国が主権国家であるかのように偽装的にふるまうから、政策判断がわかりにくくなるのです。今の日本のリーダーに求められていることは、われわれの国の統治機構について率直に事実を言える人です。


「ほんとうのこと」を言う人がいないんですね。ほんとうのことを言うと、バカにされたり、叩かれたり、捕まっちゃったりする。まるでどこかの独裁国家みたいな話ですが、この国の空気はいまそんな方向に向かっている気がしてなりません。それも、独裁者による強権ではなく、「忖度」することで国民自らその道を行っているような気味の悪さ。その「忖度」には主語が無く、揚げ足を取り合うことの帰結として自分たちの首をしめているような気がしてなりません。

温室効果ガス25%削減のために原発を増やそうとしていたのは鳩山政権じゃないかという指摘があります。もっともな話です。しかし、ぼくは事故が起きる前までは原発の恐ろしさを何も知りませんでした。原発に関して本当のことっていうのは表には出てこなかった、ということをぼくは事故後に知りました。長年野党という立場にいた人もそれは同じだろうと思います。鳩山さんだけではなくて、民主党の多くの議員は原発について知らなかったんじゃないでしょうか。事故前から反原発運動をしていたならともかく、自分も知らなかったくせに、コイツは過去にこう言っていたと後だしじゃんけんのようにふるまうのは便乗批判だと思います。

それでも分からないのは、事故後に話の出た地下式原発推進なんたらに鳩山さんの名前があったこと。これは事故後に発足した話なので問題です。単に事故直後なので原発のことをまだよく知らなかった(学べば学ぶにつけ)というオチだといいのですが、彼が現在もそれを推進すべきと考えているのかどうか、知りたいです。いまぼくはだいぶ鳩山さんの肩をもっていますが、人を見る目にそんなに自信があるわけではありません。「現時点での再稼働は無理」という発言を評価するにしても、そこは注視すべき点だと考えます。


ちなみに1年半ほど前に、ぼくは鳩山政権をふり返るというタイトルで記事を書いています。いちおう連載という形でもっと続ける予定でしたが、めんどくさくなって頓挫していました。「新しい公共」とか「友愛」とか、知りたいテーマはまだあったので、気が向いたらまた書きたいと思います。
鳩山政権をふり返る(1) 序
鳩山政権をふり返る(2) 沖縄米軍の抑止力
鳩山政権をふり返る(3) 記者会見のオープン化

鳩山政権崩壊の原因でもあった沖縄米軍の問題については、オスプレイが問題になっているいま、再考するべき時期でもあると思います。その際に考えなければならないことは、オスプレイの安全性云々というよりも、「日本からどうこう言う話でない」とついうっかり「ほんとうのこと」を言ってしまった(朝日新聞)野田首相に象徴されるような「対米姿勢」について。原発の問題とも相通じるように、なにか大きな存在(アメリカとか既得権とか)に依存して単一的なフレーズで思考停止するのか、自立するために自分のあたまで考えて自分のことばを吐き出すか、という話です。
こちらの内田樹さんの記事もご一読を。
米軍のフィリピン移駐について考える - 内田樹の研究室


とにかく鳩山さんはバカ正直な人であると、ぼくは思います。ブレまくるのもそのせい。揶揄したい人は揶揄すればいいし、ぼくは支持したいので支持します。同時に、地下式原発の件も含め今後の原発政策をどう考えているのか注視します。この人は、野田首相とは違って、聞く耳を持っていると思うから。「ほんとうのこと」を言ってくれるという点では期待してしまうから。
ぼくはやっぱり鳩山さんの訥々とした喋りが好きなんですね。決して声を荒げず他人を非難しない友愛の人。こういう人が政治家として立てるような懐の深い社会であればなあと思います。甘いと言われるでしょうけど。

政治家って、ぼくらの代表なんであって、何でも知ってる訳じゃありません。ぼくらとたいして変わらない。すべての問題に対案を示せるスーパーマンは存在しませんし、逆に、政治家が専門家であっては困るんです。政治家は、ぼくら一般市民の目線から、一般市民の声を聞いて、それを国政に反映するのがお仕事なんであって。もちろん、それらを消化する上で専門家の見識は必要になりますが、それが出発点になってはいけない。アメリカや官僚の意向が出発点になってはいけない。出発点はあくまでも「国民のみなさん方の声」です。よね。

だからぼくらが政治に参加するっていうことの意味は、政治家に騙されないように誰それの言動や派閥を注視してグループ分けしたりラベリングしたりすることなんかよりも、政治家と一緒に考えることっていうのが本質だと思います。一般市民の立場で、自分のあたまで。だからこそ、統治者に必要なのは「ほんとうのこと」を言うこと。学べば学ぶにつけ、でいいじゃないですか。




追記(8/27)
8月18日に行われた、鳩山由紀夫氏による民主党政権の3年間を振り返る講演のアーカイブ
民主党政権の3年間を振り返る──鳩山由紀夫が「大山村塾」で講演 - THE JOURNAL

ふたたび鳩山政権をふり返る

ふたたび鳩山政権をふり返る 2012.07.23 Monday [政治・メディア] comments(0)
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