子に受け継ぎたいもの(2)いい加減な親になりたい

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前回の続き。

目の前の息子と娘に、ぼくはいったい何を受け継ぐことができるのか。日々自問します。
むかしであれば、子に受け継ぐといえば家であったり財産であったり。っていうのが親の責務だったのかもしれないけれども、ぼくらはそれら財産を食い潰してしまった世代で、いま目の前の生活だけでも手一杯な経済状況では子に受け継がせるだけの遺産も無いわけで、葬式とかいったいどうすんだろうと思っちゃいます。

親として、毅然とした規範を示せることなんて、たぶん何もない。ぼくはそこまで自分に自信をもてません。というか、それでいいんだと開き直っています。子どもたちが元気でいられるような環境を差し伸べてあげることが、大人の責務だと思います。それってどういうことなのか。「正しい」ことや「正解」を教えてあげることが大人の役割なのか。ぼくは、できる限り、いいかげんでちゃらんぽらんな親になりたいと思っています。「いい加減」のできる大人でありたいと思っています。

大学における教育-教養とキャリア - 内田樹の研究室より
ほんとうに個性的な生き方をしている人間は今のメディアには出てきません。メディアのアンテナがそういう人は探り当てられないんです。でも、ほんとうはそういう人たちのはげしく個性的な生き方を見せてあげることが若者たちにとってはいちばんの励みになるんです。「なんだ、こんなふうにしてもいいんだ」と思えると、人間はほっとする。メディアがほんとうに若者の不活動的傾向を何とかしたいと思っているなら、どうすれば若者たちがまわりを気にしておどおど怯えなくて済むように定型から解放してあげることが第一の仕事なんじゃないですか。


いまの世の中が息苦しくなっているのは、いいかげんな大人がどんどん少なくなっているからです。規律を重んじ、コンプライアンスの遵守を至る所まで適用して、自らもがんじがらめになっている。「立派な大人」を演じている。自分がこんなに必死でいろんなことを我慢しながら立派な大人を演じているんだから、当然他人も演じるべきだと思うわけで、他人に対してもコンプライアンスの遵守を強いる。そこから外れた人をよってたかって糾弾する。で、ところで、なんでそんなに「決まり」が大事なんですか?

そもそもなんのためにその決まりが作られたのかを考えずに、コンプライアンス遵守という事実だけをがなり立てるのは、大人のふるまいではありません。しつけ、教育、常識。それらが存在する理由を考えることなしに、ただ子どもにそれらを押し付けるのは大人のすることではない。小学生の「言〜ってやろ言ってやろ、せ〜んせいに言ってやろ」と同じレベルのマインドセットです。それらのしつけや教育が逆に子どもを苦しめることになりはしないか。まわりの目を気にしておどおど怯えるような人格形成に寄与することになりはしないか。

増田聡さんのツイートより
オレはやっぱ「社会はけっこう甘い」ことを身体張って証明しようとする大人に惹かれるし自分もそうなりたいと思うけどなあ。「社会は甘くない」って若い人に言うことだけを生き甲斐にするような大人になりたいか?まあなりたくないわな普通


「大人なのにそんなんでいいんだ」っていう姿をさらけ出すことは、「立派な大人」を演じている人からすれば恥ずべきことかもしれません。しかし、子どもたちを定型から解放してあげるには、まず大人自身が「立派な大人」という定型から解放されていることが大きな道しるべになるのではないかと思います。

だって、自分がいい年になってみると、子どもの頃に漠然と抱いていた大人のイメージとはぜんぜんほど遠いじゃないですか。ぜんぜん「立派な大人」なんかじゃないじゃないですか。なのに、ただ年くってるからといって、さも物を知っているかのようにふるまったり、若年層に偉そうにふるまうっていうのは滑稽です。そういう口うるさい人の論拠となっているものって、常識だの、しつけだの、社会的道義だのって。ぜんぶ自分とは離れたところに責任を置くんですよね。オレを見ろって言わないの。自分はなってないくせに常識がどうの、倫理がどうのって、そんなもん言われた側からしてみれば、嘘こけって思いますよね。

いいからもう嘘こかないで、ゆる〜くやればいいじゃん。ガンバル人は頑張ればいいし、ガンバラナイ人は頑張らなくていいじゃん。他人のことをあれこれ目くじら立てることないじゃん。もっと自分のことを楽しめばいいじゃん。

内田樹さんのツイートより
みんなが上機嫌で、開放的で、innovative なマインドセットになるためにはどんなシステムを設計したらいいのか。そのためにはまず自分自身が上機嫌で、開放的で、innovative でなくちゃいけない。怒らない、恨まない、悲観しない。


いいかげんでちゃらんぽらんな大人の例として、ピエール瀧という人物がいます。ぼくは彼らのことが好きだと以前の記事(電気に魅せられて)で書きましたが、なぜ彼らがかっこいいオッサンであるかというと、彼ら自身が人生を楽しんでいるからだろうなと思います。それがどうしようもなく伝わってくるから。そういう人の周りにって、自然に人が寄ってくるんですね。それも類は友を呼ぶというか、同じように人生を楽しんでいる、あるいは楽しみたいと思っているような人たちが寄ってくる。

もうひとつ大事なのは、そうやって自分が楽しんでいる人っていうのは、他人に対して寛容になれる。自分が充足されていると、他人の揚げ足をとるようなせせこましい気分にはならない。他人を糾弾したくなるのは、自分が満たされていないからです。自分はこんなに我慢しているのに、自分はこんなに苦労しているのに、自分はこんなに不運なのに、っていう恨み妬みがある。他人にも同じような我慢や苦労を強制したくなる。そうやってどんどん規制をかけてコンプライアンスが強化されていく。いまの日本ってそういう悪循環にハマっている気がします。

「むかしはよかった」と言う老人たちが思い描く「むかし」っていうのは、いまよりもっとずっとゆる〜い感じの共同体なのではないでしょうか。むかしは、何の仕事をしているのかよくわからない正体不明の大人がふらふらしていたという話を聞きます。そういう大人がいることが許されていた。つまり共存していた。みんな違ってみんないい、というフレーズがわざわざ取り上げられる必要がないくらい、多様な人たちが共存している社会だったんじゃないかと想像します。で、そういういいかげんな大人が許されるっていうのは、自分もいいかげんな大人であるっていうことをわかっていたからなのではないかと。

本当は、ほとんどの男はいいかげんでちゃらんぽらんなんじゃないかと思います。いいかげんでちゃらんぽらんなのに、真面目なフリをしすぎたんだと思います。「立派な大人」を演じているうちに、イデオロギーと自分の感情の区別もつかなくなってしまった。本当はいいかげんでちゃらんぽらんなくせに、立派な大人のフリをして、経済成長のために原発をたくさん作った。でも本当はいいかげんでちゃらんぽらんだから何百年も後のことまでは考えていなかった。事故が起こってしまったときに、いいかげんでちゃらんぽらんな素地が露呈した。それがもうバレているのに、この期に及んでまだ真面目なフリをしているのが痛々しい。

自分がいいかげんでちゃらんぽらんであることを自覚しているならば、原発なんか作れません。いいかげんでちゃらんぽらんな奴にコントロールできるわけないから。こんなにいいかげんでちゃらんぽらんなオレたちでもなんとか楽しくやっていけるような仕組みを作ろうぜっていうのが、上機嫌で、開放的で、innovativeな態度なのではないかとぼくは思います。

財源が無いと言って血相を変えたり、増税の根拠にしたりする政治家ばかりですが、財源が無いならば無いでしょうがないじゃないですか。人口は減る一方なんだし。カネがなくても、それなりにみんなが楽しく暮らせるような仕組みを考えるのがほんとうは政治なのだと思うのですが、そういう声は永田町からは全く聞こえてきません。

「贈与経済」論(再録) - 内田樹の研究室より
かつて青島幸男は「ぜにのないやつぁ俺んとこへこい 俺もないけど心配すんな 見ろよ 青い空 白い雲 そのうちなんとかなるだろう」というすばらしいフレーズを植木等のために書きましたが、こういうセリフがさらっと言える人間が「ぐるぐる回る」活動のハブになる。そういうのが理想の社会だと僕は思っています。


なんか政治の話になっちゃいましたが、子育てもほとんど同じです。毎日子どもの顔を見ていると、どうやったら子の子が元気に育ってくれるだろうかと考えます。どうやったら定型に捕われず、まわりを気にしておどおど怯えなくて済むように育ってくだるだろうかと考えます。内田さんの言うような「贈与経済」が実現可能であるならば、そういう未来をぼくは子に与えたいなあ。よってぼくは、いいかげんでちゃらんぽらんな親になることを目標にします。

とはいえ、難しいですよね。

とくに原発事故の影響を考えると。子どもの命に関わる問題にまでいいかげんでちゃらんぽらんではいられない。(経済成長について真面目なフリをしている男どもにかぎって、放射能の問題についてはいいかげんなんですよね。)さて、どうしたものか…。

子に受け継ぎたいもの(2)いい加減な親になりたい

子に受け継ぎたいもの(2)いい加減な親になりたい 2012.04.13 Friday [子育て・教育] comments(0)
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