フォーラム山形 映画愛のつながるローカルな文化

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脈絡のない話なんだけど、一昨夜、夢にケビン・スペイシーが出てきた。いや、好きな俳優なんですけどね、夢に出てくるほどの大ファンってわけでもないので、なんか印象深くて。その夢は、ジャッキーチェンが出てくるみたいなアクション活劇風でちょいサスペンス風味の物語を俯瞰して眺める感じが続いた後に、それが映画のワンシーンで、ぼくは脇役なのかスタッフなのかわかんないけど舞台裏に居て、水を飲んでたらケビンが出てきて一緒に水を飲んだ。って、それはどうでもいい話なんだけど。映画愛に溢れるケビン。その辺りで目を覚ましたぼくは、なぜかフォーラム山形のことを思い出した。

山形でいわゆる単館系の映画ばかりを上映する「フォーラム」という映画館があった。大手町の路地裏、こじんまりとした場所に位置し、スクリーンは2つ。飲み物の自販機はあったが、売店は映画のグッズのみで、ポップコーンも売ってない(館内は飲食禁止だった)小さな映画館。結婚する前の若かりしぼくはここで妻とよくデートした。10年ほど前のこと。

ほどなく駅隣接の新しいビルにマルチスクリーンの大きな映画館がオープンした。フォーラムと同じ系列の映画館で「ソラリス」と名付けられた。キャラメル味のポップコーンとジュースを片手に、大きなスクリーンに映る派手なハリウッド映画を観るのも楽しかった。しっとりミニシアター系のフォーラムと、楽しいハリウッド系のソラリス。デートの場所(シチュエーション)がひとつ増えた感じで、フォーラムとソラリスが共存した時代はいま振り返ると幸せな時期だった。

いまでもフォーラムという名前の映画館はある。しかし(裏事情はぜんぜん知らないが)おそらく経営者が変わったのであろうか、街中に移転してマルチスクリーンの映画館としてオープンしてからはなんだか別物になってしまった(とぼくは感じている)。まるでソラリスが2つになったような。もちろんフォーラムでは単館系の映画も上映はしているのだけれども、なんというか、かつてフォーラムとソラリスの間にあったはずの差異がなくなった気がする。

フォーラムで観た思い出の映画といえば、えーと、ん?なんかあまり憶えてないな。映画の内容はもとより何を観たかもあまり憶えてない。ミニシアター系の作品を観に行くというマニア心を満たす楽しみもあったし、単純にそういう作品も好きだったんだけど。映画そのものよりも映画を観に行ったという感覚、フォーラムに滞在しているときの質感・クオリアのほうが記憶に残っている。

ぼくはフォーラムの空気が大好きだった。いかにも映画好きが運営してます的な、いつまで経っても接客に慣れない感じのスタッフ(すごくいい人たちだった)も、狭い駐車場も(駐車する場所がなくてよくスタッフの男の子が受付と駐車場間を走ってたのもなつかしい)。手作り感にあふれるパンフレットも(それを眺めながら、次はこれ観ようかなんて言うのも楽しかった)。それから、そこに通う人たちの空気も。べつにお客さん同士の会話はなくとも、映画好き同士の暗黙のルールみたいなものがあった。無視するわけでもなく、干渉しすぎるわけでもないっていう距離感が心地よかった。なんというか、空気が澄んでいたような気がする。

しかし山形で単館系の映画館を続けるのは経営的に厳しかったのであろうか。移転後のフォーラムはスタッフも一変し、広くて綺麗になったが、あの「空気」はなくなってしまった。
※いまさら知ったのだけど、フォーラム山形は市民による1,000万円の出資によって1984年によって誕生した「市民の手作り映画館」なのだそうだ。
History of FORUM - フォーラム山形/ソラリス

つくづく思う。文化というものは「好きだからやる」という人と、そこに通う人たちによって、そのつながりによって自然に形成されるものだと。そういう点ではソーシャルネットワークと相通じるところがある。経営者あるいは制作側から与えられるものを、ただ消費するだけのところには、経済活動は生じても文化は生じない。よしんば生じたとしても定着はしない(カネの切れ目が縁の切れ目になる)。地方都市にグローバル企業が進出し、どこの田舎に行っても同じようなショッピングセンターが並び、全国どこでも同じようなものが変える環境が広がったことと、その地方独自の文化が衰退していったことはどう見ても偶然ではない。

山形市は、大手町フォーラムという文化を捨ててしまった。時代の流れなのかもしれないし、経営的な淘汰という意味では当然なのかもしれない(当時は社会的なことに興味がなかったので移転の事情は知らないが)。かつて芸術家が活動を続けられる背後にはパトロンの存在があったように、文化はマーケットとは必ずしも相入れない。芸術家に経済活動まで求めるのはちょっと酷だと思う。フォーラムという文化を存続させるためには公的な補助が必要だったのかもしれない。それを市民は望まなかった(あるいは興味がなかった)ということであろうか。

いまはただ在りし日のフォーラムをなつかしく思う。毎週のように通っていた独身時代。子どもが生まれてここ数年は映画館に足を運ぶこともなく、DVDはアンパンマンとドラえもんばかりだけど。息子がもうちょっと大きくなって一緒に映画館に行くようになったとしてもアンパンマンとドラえもんばかりだろうけど。老後はまた夫婦で映画館デートしたいね。そうそう、映画を観終わったあとに駐車場まで歩く道すがらに見上げる夜空も好きだったなあ。


フォーラム山形 映画愛のつながるローカルな文化

フォーラム山形 映画愛のつながるローカルな文化 2012.04.09 Monday [いい場所] comments(0)
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