荒井良二さんに出会った

 このエントリーをはてなブックマークに追加 TOPSY
天気のよい日曜日でした。
ママはお仕事だったため、息子とふたりでお出かけした流れでわが家ご用達のパン屋さんメリメロへ。息子お気に入りのミルク棒パンを、店先の木陰が心地よいテラスでぱくぱくと食べておりました。いつも以上に食いつきがよく、あっというまに1個をたいらげてしまったのでもう1個買ってこようかと思っていたところ。お店の前に停まった白い車の後部座席から、いかにも一般人ではないオーラをただよわせた人物が降りてきました。そのままパン屋さんの店内へ。あれ?荒井良二さんに似てたなあと思っていたら、先ほどの車が駐車場に。見ると側面に東北芸術工科大学のロゴ。おお、間違いないじゃん!ってわけでそそくさと店内へ。会計を済ませたところの荒井さんにおそるおそる声をかけました。

あ、あ、あの、あらいりょうじさんですよね?
え、と、山形じゃあにぃも見に行きました。
も、もしよろしければ息子と写真撮っていただいてもいいですか?

っておれ、めっちゃミーハーな上に、息子をだしに使ってやんの。しかし、そんなワケのわからない素人のいきなりのお願いにも関わらず、荒井さんは
「あ、いーよいーよ」
「ん〜、外で撮ろうか」
なんつって、すごい気さくに応じてくれました。とてもフランクに話してくれて息子の頭もなでてもらいました(ような気がするのですが舞い上がっていたのでよく覚えておりません)。めっちゃいい人じゃないですか。

昨年『荒井良二の山形じゃあにぃ 2010』を見に行ったときの息子はまだハイハイでした。荒井さんのおもちゃ箱のような、あそび心に溢れたたのしい展示の数々を家族3人で体験できただけでもしあわせでしたが、それから1年後にまさかご本人に出会えるとは。

で、撮ってもらった写真がこれ。



息子は訳がわからず真顔(笑)でもちゃんとカメラ目線でえらい。ちなみに撮影してくださったのは、先ほどの車を運転していたキュレーターの宮本さん。荒井さんはこの日、山形国際ドキュメンタリー映画祭の一環として、やまがた藝術学舎にて上映の「まわりみち、あしのねいろ」(「山形じゃあにぃ」の制作風景やワークショップの様子をまとめたドキュメンタリー映画)の映画鑑賞とトークのためにいらしたのだそうです。ってそれは後から知ったんですが、そんな忙しい合間にすみませんありがとうございますいい思い出になりました。

荒井さんが去った後も2個目のミルク棒パンとりんごジュースを息子に食べさせながらしばらく余韻に浸り、ああ、「かっこいい大人」だなあと惚れ惚れとしてしまいました。かっこよさっていうのは、たたずまいに現れるんだなあと。なんか颯爽としてるんですよね。


そんな荒井さんが、糸井重里さんと対談したほぼ日の記事がとてもおもしろかったので少し転載します。2010年の対談です。タイトルの通り、荒井良二さんと糸井重里さんは似ていて、それはやっぱり颯爽としてかっこいい大人っていうことになり、そんな二人の対談はやさしくてたのしい。今回引用するのは、荒井さんが、糸井さんが作った絵本『さよならペンギン』に影響を受けたという話。

ほぼ日刊イトイ新聞 - 荒井良二さんと糸井重里は いろいろ似ていた。より
荒井:はい。で、もうひとつ、
すごく影響を受けたのが、
糸井さんと湯村(輝彦)さんの
『さよならペンギン』だったですよ。
糸井:えっ。
荒井:あれは、ぶっ飛びましたね。
で、すごく欲しかったんだけど、
これ、家に持って帰って読んだら、
たぶん、打ちのめされて
自分の絵本がつくれなくなると思ったから
買わずに本屋に置いとこうと決めたんです。
それくらい、ぶっ飛んだ。

(中略)

荒井:明らかに、他と違ってましたからね。
ぼくは、幼児期の絵本の体験っていうのが
まったく記憶になくて、
ほんとに、意識して読みはじめたのが
大学に入ってからなんです。
で、日本の絵本をいろいろ読んでみたら、
やっぱり、教科書っぽいものが多いんですよ。
糸井:全体に、啓蒙的なんですよね。
荒井:そうそうそう。
そこで『さよならペンギン』ですから。
糸井:啓蒙のかけらもない(笑)。
荒井:はい(笑)。
もう、「どかーん!」って感じで。
糸井:ふふふふふ。
ストーリーを簡単にご紹介しましょう。
ええとね、ペンギンが
海水パンツを買いに行くんです。
で、タコに会ったり象に会ったりしながら
いろんな場所に行って、
ようやく海水パンツを買う。
どんな柄かなっていったら、
アロハ柄のパンツだったんです。
こりゃいいぞ、って言って
みんなに見せびらかしに行くんですよ。
荒井:ふふふふふ。
糸井:で、また、あちこちペンギンが行って、
パンツを見せびらかして、
最後は野球場に行くんです。
荒井:そうです、そうです。
糸井:そしたら、バットで打たれてしまって
「ホームラーン」って言って終わるんです。
一同:(笑)
荒井:「これでいいんだ!」と思ったわけですよ。
一同:(爆笑)
糸井:オレもね、どうなのかなと思ってたんだけど、
湯村さんが「いいじゃない!」って言うし、
ひとりが「いい」って言えばもうね、
それでいいのかなって思ってね。
荒井:いや、あの本は、ぼくにとって、
絵本をつくる礎のひとつですよ。
糸井:そんな(笑)。
荒井:いや、ほんとですよ。
絵本をつくるときに、
どんなにはちゃめちゃなことを
思い浮かべても、やっぱり、
絵本をつくるときの
「鋳型」みたいなものがあって、
そこからはみ出そう、
はみ出そうとするんだけど、
どうしてもはみ出ない。
糸井:うん。
荒井:そういうときに、
『さよならペンギン』があると
ああ、これでいいんだぁって
ほんとに思えるんですよ。


荒井さんは自由にものをつくる人だから作品に向かう度にいつもそういうことを考えているのかもしれません。“「鋳型」みたいなものがあって、そこからはみ出そう、はみ出そうとするんだけど、どうしてもはみ出ない。”っていうのは、わかるなあ。べつにものをつくる人でなくてもそういう経験ってあるんじゃないでしょうか。

世の中には、「こうしないといけない」っていうことを教えてくれる大人と、「これでいいんだ」ってことを示してくれる大人がいるのだと思います。どちらが正しいというわけではなく、バランスの問題だと思う。人間ってどうしても惰性でほっておくと現状維持になりがちです。鋳型にはまったほうがラクだし。いろいろなことを「こういうものだ」って片付けちゃえば、ものを考えないですみます。だけど。

いま世間に瀰漫している息苦しさみたいな空気って、「これでいいんだ」ってことを示してくれる大人が少なくなったことと関連しているなあと思います。「これでいいんだ」って人がなるべく出ないように「鋳型」で規制しようとしたり、「これでいいんだ」って人をよってたかって潰そうとする。みんな一緒じゃないと不安なんでしょうか。そのうち「これでいいんだ」っていう発想があることすら人々は忘れてしまうんじゃないかと。

だから荒井さんのように「これでいいんだ」を全身で体現している人に出会うと、かっこいいと感じるんでしょうね。荒井さんにとっての『さよならペンギン』って、あの、なんといいますか、Think differentですよね。ジョブズのこういう言葉につながる。

その他大勢の意見の雑音に自分の内なる声、心、直感を掻き消されないことです。自分の内なる声、心、直感というのは、どうしたわけか君が本当になりたいことが何か、もうとっくの昔に知っているんだ。だからそれ以外のことは全て、二の次でいい。 -スティーブジョブズBOTより


たぶん、いろいろな場面でこういう選択っていうのは誰にでもたくさん訪れていて、それに自覚的であったり自分の内なる声に耳を傾けること。その積み重ねが「かっこいい大人」をつくっていくんだろうなと。その他大勢の意見の雑音に自分の内なる声、心、直感を掻き消されないから、颯爽としていられるんじゃないかな。

ところでほぼ日では、この対談がきっかけになって長らく絶版状態だった『さよならペンギン』が復刻しました(その経緯は「さよならペンギン復刻記」にまとめられています)。復刻までの内情はよく知りませんが、たぶん、おもしろそうだからやっちゃおうぜっていう感じだったんじゃないかなあ。なんか、そういうのいいですね。こういう「ノリのよさ」っていうのも、かっこいい大人のひとつの要素だと思うのでした。

荒井良二さんに出会った

荒井良二さんに出会った 2011.10.12 Wednesday [いい場所] comments(2)
このエントリーをはてなブックマークに追加TOPSY
真琴 (2011.10.14)

荒井良二さんは、昔、全然荒井さんのことを知らなかった時に偶然お会いしたことがあります。ペーターズギャラリーというところで、展示をされてました。観覧者はほとんどいなくて、でも子供のお客が1人いて、そこに不思議で自由な感じの男性が現れて、子供と一緒に絵を描いたり絵本を工作したりし始めました。そのうち、自分で描いた絵を切り抜いてTシャツに貼り付けたりして、変わってて楽しそうな人だなと思いました。後で考えたらあれは荒井さんでした。私はその後、荒井さんの絵本が大好きになりました。あの時知っていたら…

山やま (2011.10.14)

とてもすてきなエピソードですね。ほんとそんな感じで自由で壁がなくてたのしそうな人だなあと感じました。そういう大人がもう少しだけいてくれるとよのなかもずいぶんたのしくなるし、ぼくもそういう大人になりたいなあと。










url: http://yamachanblog.under.moo.jp/trackback/332
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...