ヒバクシャになったイラク帰還兵 劣化ウラン弾の被害を告発する / 佐藤真紀

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イラク帰還兵であるジェラルド・マシューは針で刺すような偏頭痛をはじめとした体の不調を来す。また帰還後に産まれた娘は右手の指が無いという先天的な障害を持っていた。ジェラルドはこれらが戦地に於ける劣化ウランの影響だとの疑いを持ち、軍に検査の要請をするが「あなたの娘の障害は劣化ウランとは関係がない」という判で押したような返答が帰ってくるだけだった。軍は劣化ウランの危険性さえも認めようとはしない。2005年9月、8名のイラク帰還兵とその家族がアメリカ合衆国陸軍省を相手に裁判を起こす。劣化ウラン兵器のイラク戦争での使用、劣化ウラン兵器の人体に対する危険性を知りながら、イラクに従軍した兵士に対して何ら警告を与えず、防御の為の措置を講ずることもなく汚染にさらし、帰還後も正確な診断をすることなく適切な治療をおこたったことに基づき、損害賠償を求めた。



僕は本書ではじめて「劣化ウラン」の存在を知ったのだが、湾岸戦争やイラク戦争で「劣化ウラン弾」という兵器が使用されたという事実を知っている人はどれだけいるのだろうか。その兵器が使用後も放射性を持ったまま放置され、ジェラルドのように前線ではなく武器の回収作業によってさえも被爆する危険性があるということを。そもそもが現地へ派遣される兵士でさえも「劣化ウラン」という言葉を知らない人が殆どだというのだ。いつだって被害を被るのは指揮を執る人間ではなく現場の人間だ。それだけに現場を知る人たちの声こそが、政府やペンタゴンの発表よりも生々しく真実を語っているように思う。政府に反する声を挙げることは多大な困難を伴う。ジェラルドは劣化ウランの訴訟を起こしてから、それまでの友人たちが全く連絡をくれなくなったそうだ。それでも自らの体験をもとに劣化ウランの恐ろしさを伝え続けることが兵器の廃絶につながると信じ、声を挙げ続ける決意をしたジェラルド夫妻に胸を打たれた。

日本では自衛隊派遣が問題になったが、後方支援として現地に赴いた自衛隊の人たちも被爆している可能性はあるわけで、しかしそういう危険性が論議にのぼることはまず無い。国家としてのアイデンティティだかイデオロギーだか知らないが、そのために犠牲になるのは必ず現場の人たちなのだという想像力を持たないと取り返しのつかないことになる。ウランの半減期は44億6400万年。イラクでは湾岸戦争後、先天性障害を持つ子供が急増しているそうだ。戦争の現場を知る人たちは必ず戦争の恐ろしさを語る。戦争を知らない世代ほど勇ましい。

ヨーロッパでは同様の帰還兵や家族に対する補償が認められた例が幾つもあり、さらにベルギーでは今年6月に、劣化ウラン弾禁止法が施行された()。日本は相変わらず様子見、というかアメリカ追従の姿勢を崩さない。日米関係がある以上率先して禁止の旗は振れない、というわけだ。そこまでして保とうとする日米関係って何なんだろう。

ヒバクシャになったイラク帰還兵 劣化ウラン弾の被害を告発する / 佐藤真紀

ヒバクシャになったイラク帰還兵 劣化ウラン弾の被害を告発する / 佐藤真紀 2009.08.03 Monday [読書] comments(0)
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